思い出の賃貸アパートのはしご

初めて1人暮らしをする時は、誰でもワクワクするものです。私はある年の夏をほぼ丸々賃貸アパート探しに費やしました。時間はたっぷりありましたから、いろんな部屋を見て回ることができました。不動産会社だけも5件ぐらい行ってみて、様々な部屋を見ました。 それまではずっと自宅に住んでいた事もあり、こんなに多くの賃貸アパートが自分の環境にあったとは、知りませんでした。「色々なところに住まいがあって、生活があるのだなあ」と、妙に大人びた気持ちになりました。1人暮らしを決心しなかったら、ずっと知らないままでいるところでした。 1つ忘れられない部屋があって、最寄り駅から徒歩10分位のアパートの一室でした。とても静かな場所でしたが、近くにコンビニやスーパーもあり、そう悪くはない環境でした。 そこはワンルームでロフトがあったのですが、そのロフトへ行くために不自然に大きなはしごがありました。後にも先にもロフトの部屋を見たのがそれだけで、巨大すぎるはしごに驚いてしまい、その部屋は選びませんでした。 結局は別の部屋にしたのですが、そのワンルームの近くを通るたびに、あの巨大なはしごは今も存在しているのかなと、不思議な気持ちになるのでした。